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INTERVIEW

インタビュー|Christina Petersen 氏 (後編)

Coinbase プロダクトマネージャー

世界のプロダクト人材に聞くプロダクトマネージメント

2021.10.08

インタビュー|Christina Petersen 氏 (後編)

海外の第一線で活躍するリーダーたちは、どのようにしてプロダクトマネジメントに取り組んでいるのか。CPO協会によるインタビューを通して、彼らの経験やキャリア、プロダクトにかける想いをお伝えします。

暗号通貨の売買を行うデジタル通貨交換取引所Coinbaseのプロダクトマネージャー、Christina Petersen氏へのインタビューの後編です。前編では、サポートからプロダクトマネージャーになるまでの道のりとその仕事に適応する際に直面した課題、そして優れたプロダクトマネージャーになるための資質などについて聞くことができました。

Petersen氏は、Coinbaseのインテグレーションプロダクトマネージャーとして、社内の各ビジネスシステム間のインテグレーション構築に携わる傍ら、2018年度のWomen in IT最優秀賞を受賞した、テクノロジー分野における女性の代表でもあります。後編では、テクノロジー分野の女性とともに行っている活動に焦点を当ててお話を伺いました。

Christina Petersen 氏

Coinbase

プロダクトマネージャー

Coinbaseにてプロダクトマネージャーとして社内でビジネスチームが使用するシステム間のインテグレーションを担当。セールスフォース・ウィメンズネットワークの副理事長を務めており、2018年にWomen in ITの最優秀賞を受賞。プロダクトマネージメントの分野でキャリアを歩み出す女性たちを導いている。

注: 経歴、記事の内容はインタビュー当時(2021年2月)のものです。


― 2018年にWomen in ITの最優秀賞を受賞し、セールスフォース・ウィメンズネットワークの副理事長も務めていらっしゃるそうですが、業界で活躍する女性の代表への第一歩はどこから始まったのでしょうか?

以前の勤務先だったSalesforceの文化の影響です。そこで、従業員リソースグループ(employee resource group)による従業員のためのコミュニティ活動に関わったことがきっかけでした。

Salesforceには、自分らしさを最大限に発揮して仕事ができる、オープンな文化が根付いていました。入社した時の上司が女性だったのですが、その人はウィメンズネットワークのメンバーでもあったのです。それで参加を勧められて、ミーティングやランチ会に何度か顔を出しました。まだ経験の蓄積がないキャリアの初期の頃に男性中心の業界で働く女性について、ほかの人の様々な経験を聞くことから学ぶことができました。私は、テクノロジー業界の女性であると同時に、プロダクト業界で働く女性でもあり、それはまた違うレイヤーで、違う学びがあります。話を聞き、オープンに語らいながら学ぶことが自分の仕事に当てはめられるとわかってくると、活動へのやる気も湧いてきました。

なぜ女性は、男性と同等には扱われず、別の扱いを受けているのか。そういう疑問と向き合ううちに、自分のためにもっと知りたいだけでなく、人の役に立ちたいという気持ちがだんだん強くなっていったのです。そうして、イベントの企画などに積極的に参加していたら、プログラム担当の人たちから理事会に入ってもっと本格的に活動しようと言われました。そして4年目くらいの頃に副理事長になりました。

活動からだけでなく、私自身もテクノロジー業界の女性であることがどういうものなのか、経験を重ねる中で多くを学びました。その結果、お互いに支え合い、自分の気持ちを打ち明け、弱音を吐くことができる場を設ければ、もっと女性たちにテクノロジー業界に残ってもらえるのではないかと思っています。そのようなサポートシステムがあるのはとても重要なことです。女性だとIT業界をやめてほかの仕事に就くのではないかという懸念があり、私はそういう状況を防ぎたいと思いました。それが本格的に活動を始めた一番の理由です。

女性が仕事を続けるためには支え合うサポートシステムが重要

― ウィメンズネットワークが成功しているのは、企業文化のおかげでしょうか?

確かに安全な環境であることは重要で、その模範を示してくれていたと思います。私の上司も参加していましたし、幹部も自らプレゼンをして、本当に熱心に参加していました。

例えば、会社のCレベルの幹部が参加したことがありました。そして、自分のこれまでキャリアについて語り、男性優位と言われる業界で、女性としてどのように働いてきたか、自身の弱さも含めて率直な意見を包み隠さず話して、経験を共有してくれたのです。そんな話を聞いて、またその幹部がこうした会話に参加しているのを見て、とても嬉しく思いました。またCEOから社員全員に対して、この会社ではありのままの自分で働いてほしいという話もありました。さまざまな意見が出ることは、会社の生産性向上につながるという理解の現れです。

専門職にとっての助けとなる環境があるということ、また、大きな声を出したり、単に体が大きかったりするだけで注目される人もいるということを知っておくべきです。その上で、女性のリーダーシップとのスタイルの違いを意識しなければなりません。女性は穏やかな口調で話し、大声を出さないことがあります。また、意見を述べるように声をかけてあげる必要があるかもしれません。このようなリーダーシップのスタイルが異なる文化を知っておくことが重要です。

ウィメンズネットワークは、自由に語り合える場です。もっと多くの女性たちに参加してもらい、圧倒的に男性が多い環境でどう働くかということについてそれぞれの経験を共有してもらいたいと思っています。

今では、どの企業も競って良い職場環境を証明しようとしている

― こうした問題に取り組む女性が上司だったのは幸運だったと思います。しかし、男性の上司の場合はどうでしょうか?

私の場合、確かに女性の上司から働きかけてくれました。後で男性が上司になりましたが、女性に関するプログラムに理解のある人でした。とは言うものの、違いはあります。私は女性ですから個人的な経験が反映されていることで深く共感できましたが、男性がこの取り組みに参加したとしても、女性と同じ経験をしていないためにつながりを感じないかもしれません。それでも強力な味方にはなってくれるでしょう。

― シリコンバレーでは、テクノロジー分野の女性に関して変化がありましたか?

最も大きく変わったのは、Me Too運動に関連する点ではないでしょうか。あらゆる業界が、自分自身を見つめ直すきっかけになったと思います。以前だったら「まあ、いいか」ですんでいたことが、もう許されなくなったのです。私自身も、テクノロジー業界に長くいる人間として変化を感じています。テクノロジー業界は、私が入る以前には誰もが知る女性の数が少ない業界だったわけですから。

半分はPR的な観点から発信されているメッセージもありますが、半分は現実に変化が起こっていることだと思います。どの企業も、あらゆる人を歓迎していることを最初に伝えたいと思っています。自分たちは味方であること、支援しているということを競って証明しようとしています。

もっと多くの女性にリーダーシップを発揮してもらいたい

― テクノロジー分野で、男性が同じ職場の女性の味方になるためにはどうすればいいか、アドバイスをお願いします。

これは男女ということに限らず、権利を与えられていない全ての人たちに共通することだと思います。そこで、オープンな心と学ぶ姿勢を持ち人の話に耳を傾けるようにしてください。自分が経験していないことは、すぐにはぴんと来ないでしょう。しかし、意識的に理解しようとし関わりを持つようにすることが役に立つはずです。

男性の場合、ほかの男性の手助けが得やすく、キャリアアップのためのメンターやスポンサーを見つけるのは簡単です。私は、女性がいれば、その人を引き立てたり、大きなプロジェクトを任せたり、直接指導したりするなど女性のキャリア支援をすることはできないかといつも考えています。

与えられる機会に男女で差があるということを男性に知ってもらいたいです。最終的な目標は、多くの女性にリーダーシップを発揮してもらうことです。現状では、男性にそういった機会が与えられることはあたり前ですが、女性はそうではありません。リーダーシップを発揮できるようなスキルセットを女性に身につけてもらうための活動に力を重点的に注がなくてはいけないと思います。私はいつでも、私がメンターになってあげられる人はいないか、私の手助けでもっと力を発揮できそうな人はいないかと頭のどこかで考えています。それが誰にとっても必要なことだからです。


(編集:CPOA編集部)


Christinaさん、ありがとうございました。

日本CPO協会は、今後も世界のプロダクト人材へのインタビューを行い、プロダクトとの向き合い方を学ぶ機会を提供していきます。

次の記事はビジネスインテリジェンスに特化したデータビジュアライゼーションソフトウェアを提供するTableauのプロダクトマネージャーであるTerrence Tse氏。11月公開予定です。ご期待ください。

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