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INTERVIEW

インタビュー|Christina Petersen 氏 (前編)

Coinbase プロダクトマネージャー

世界のプロダクト人材に聞くプロダクトマネージメント

2021.08.17

インタビュー|Christina Petersen 氏 (前編)

海外の第一線で活躍するリーダーたちは、どのようにしてプロダクトマネジメントに取り組んでいるのか。CPO協会によるインタビューを通して、彼らの経験やキャリア、プロダクトにかける想いをお伝えします。

今回は、暗号通貨の売買を行うデジタル通貨交換取引所「Coinbase」でインテグレーションプロダクトマネージャーを務めるクリスティーナ・ピーターセン氏に話を聞きました。ピーターセン氏は、テクニカルサポートからプロダクトマネージメントに至る8年以上の経験を持ち、自身と同じようにIT業界で活躍する女性のための活動もされています。

インタビュー前編では、ピーターセン氏のプロダクトマネジメントへの道のりと直面した課題、そして理想的なプロダクトマネージャーになるのに必要な資質についてうかがいました。

Christina Petersen氏

Coinbase

プロダクトマネージャー

Coinbaseにてプロダクトマネージャーとして社内でビジネスチームが使用するシステム間のインテグレーションを担当。セールスフォース・ウィメンズネットワークの副理事長を務めており、2018年にWomen in ITの最優秀賞を受賞。プロダクトマネージメントの分野でキャリアを歩み出す女性たちを導いている

注: 経歴、記事の内容はインタビュー当時(2021年2月)のものです。


― Coinbaseとピーターセンさんのお仕事について教えてください。

Coinbaseは暗号通貨の売買を行う取引所です。私が携わるエンタープライズプロダクトマネージャーという仕事はビジネスの運営やビジネスシステム間のインテグレーションを行う、言ってみれば裏方の仕事ですね。

― 現在の会社で働き始めて、1年くらいということですが、新しい環境はどうですか。

この4月で1年ですが、インテグレーションプロダクトマネージャーを任されたのは驚きでした。ここに来るまでそういう経験は全くなかったので、いきなりの難題という感じです。Airflowを使ったデータパイプラインを理解するのに未知の用語に慣れる必要がありました。でもビジネスユニット同士の共同作業については経験があるので、どんな人に何が必要か、どんなデータがあれば働きやすくなるかということはわかっていました。楽しんで仕事をしていますよ。

― どんな経緯で入社することになったんですか。

求職中に、私の経歴に興味を持っている会社があると契約派遣会社から連絡があったんです。Coinbaseからの直接の連絡ではないので、その時にはまだそれがどんな会社かもわかりませんでした。よくあるような面接を何度も重ねる採用過程でもありませんでしたが、採用担当の方と会った結果、ぴったりマッチし働くことになったんです。

最初にプロダクトを任されたのは、会社の買収がきっかけでした

― プロダクトマネジメントの仕事に就くまでの話を聞かせてください。

大学を出てからプロダクトマネジメントの仕事に就くまでに、誰もが一風変わった経験をしてきているのではないでしょうか。私は大学でビジネス情報システムを専攻していました。最初の職場ではコンサルティングかテクニカルサポートのどちらかに進むことになっていましたが、私が選んだのはサポートの方でした。

プロダクトのサポートとかデバッグとか、特に技術面に関わる仕事でしたが、大学でビジネスを学んだ経験からそれ以外にも目を向けることができました。おかげですぐにカスタマーサポートの仕事になじんだだけではなく、そのプロダクトのエキスパートと言われるようになったのです。プロダクトの問題点もユーザーによる使われ方も全て頭に入っていたので、「こうすればプロダクトを改善することができる。」という意見を出すことが自然とできるようになっていきました。

その後、少人数のチームで追加プロジェクトを担当するようになったことで、コアチーム以外でも人間関係を築くことができました。その後メンターから特別なプロジェクトを任され、アソシエイトプロダクトマネージャーになったんです。プロダクトマネージャーがドキュメントを書いたり、営業チームのためにイネーブルメントビデオを作ったりするのを手伝っていました。そんな時、会社が買収されていきなりスクラムチームを任されたんです。

― すごい話ですね。

本当に。まるで投げ込まれるような形でしたが、そんな経緯で最初のプロダクトを担当することになりました。

― プロダクトマネージャーというのは、ビジネスユニットの間でバランスを取りつつ仕事をする、クロスファンクショナルな役割を果たすのではないかと思います。そんな仕事をする上で、どんなことが役に立ちましたか?

技術面での知識があったことはとても役に立ちましたね。プロダクトマネージャーの仕事の半分は、ユーザーが抱える問題をエンジニアリングに翻訳して伝えることですから。そしてエンジニアと一緒に技術的な問題に深く入り込み、解決策を探ることに非常に多くの時間を割きます。技術に関することをユーザーの高い要求や自分の目標に変換して表現し直すことができなければいけません。それが、技術的な会話をビジネスニーズへとつなげることに必要なんです。

― プロダクトマネージャーになってから学んだスキルは何かありましたか?

クロスファンクショナルである部分が明らかにそれまでと違っていた部分です。プロダクトマネージャーにとって、エンジニア、デザイナー、セールスチームの全員とミーティングをして、足並みが揃っているかを確認するのは重要な職務です。私の場合、それまではデザイナーと仕事をしたことがありませんでしたから、彼らと1on1でデザインの検討をするのは未知の体験でした。ですから、最初は「さて、あなたは何をする人で、私たちはどんな関わり方をしようか。」と探るところから始まるわけです。そうやって、全く違う役割を持ったメンバーたちそれぞれの役割と関わり方を学んでいきました。

プロダクトマネージャーになったことで、それまでとは違い、ミーティングを設定し、初めに物事を動かし始める役割になったということもあります。そこで学ばなければいけなかったことは、イニシアティブをとってまず私から話をして、営業チームとマーケティングチームの橋渡しをするというところです。アソシエイトプロダクトマネージャーを任されていた期間に、プロダクトマネージャーの仕事を観察する機会があったことが役に立ったと思います。

強い意見を、ゆるく持つ

― 優れたプロダクトマネージャーになるのに必要な資質は何でしょうか?

完璧なシナリオを持たないことです。先のことがわからなくても、自分が持ち得る情報を使って対処し、前進していくことが必要だと思います。

このようなスキルを揃えた上で、先頭に立って行動できるのがプロジェクトマネージャーです。とは言うものの、全ての答えや情報があるわけではないので、手持ちの情報だけでできることを考えながら前進します。どんなプロジェクトにも未知の部分があるということを肝に銘じておくことです。

プロダクトマネージャーは、自分の意見を持っていることがとても重要です。プロダクトマネージャーは前進させるのが仕事ですから、さまざまな意見や考えをまとめ、話し合いの場では自分の意見を出せなければなりません。

私はいつも「強い意見をゆるく持て」と言っています。自分の考えに自信を持ち、チームをまとめて方針に同意してもらうためには、自分の考えに自信を持っていなければできません。しかしそれと同時に、ほかの人のアイデアや反対意見を受け入れる姿勢も必要です。ほかの意見に耳を傾けながら、方向転換もできるようでなければならないのです。

自分の意見を持ち先頭に立って会話を進めながら、重要と思うことがあればそれに合わせて変化させる。そういうバランスが大切です。

現状に満足していてはいけないのです。「ここを目標に、みんなで前進しよう」と言えるようでなければなりません。ロードマップとはそうやって作られるものです。理想形で進めるのには6カ月かかるとわかったところで、それを受け入れるのではなく、「もっと早くできるプランBの方がいいかもしれない。」といってエンジニアを説得するべき時があります。

プロダクトマネージメントに向いているのは好奇心旺盛な人

― もしプロダクトマネジメント未経験者を採用することになったら、どんな資質を求めますか?

学び続けることができる、好奇心旺盛な人です。また、プロダクトについて普段から意見を持ち、改善方法を提案できる人です。これは誰にでも、キャリアのどの段階でもできることです。実際に機能を開発する経験がなくてもいい。その代わり、自分の意見をまとめ、ほかの人に納得してもらえることが重要です。例えば、ユーザビリティを向上させるためのナビゲーションを提案するといったことです。

それからプロダクトマネージャーは、ユーザーや役員と話をすることが得意でなければなりません。そして、積極的に話を進め緊張する状況に対処できる自信を持っていることです。自分が話している相手にうまく対処できれば、プロダクトマネージャーとして成功する素質ありと言っていいでしょう。


(編集:CPOA編集部)


後編では、リモートワークとパンデミックの影響、プロダクトマネージャーに求められる資質や、Salesforceのプロダクトマネージャー人材育成プログラムの話などをお届けします。

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